第37村人:草刈 繁嗣さん

2014.5.22 【あばのヒト】 投稿者:bo-kun_chan


 

あば村に関わらず、昔の農村ではどの家も牛を飼っておられました。田んぼを
引いたり、重い荷物を運んだり、肉牛にして出荷したりと牛を飼うことが生活
の一部になっていました。今は、農業用機械も発達して、田舎に牛の姿が消え
てしまいました。しかし、あば村でたった一軒だけ牛を飼っているお宅があり
ます。今日はそこのお父さんをご紹介します。

 

草苅 繁嗣(しげつぐ)さん

 

しげつぐさん2

 

 

 

「昔から牛を飼いよって、それを受け継いでいるだけです。当たり前のこと。」

あば生まれあば育ちの繁嗣さん。物心ついた時から家には大きな牛小屋があり
、牛とともに生活していました。繁嗣さんの家は、肉牛の出荷もしておられま
す。「小さい頃から牛の世話をしてきました。今では子どもみたいなもんです」
と、繁嗣さん。牛に愛情をそそぎ過ぎて、飼い犬の方は嫉妬なのか猛犬に育っ
てしまったようですが…。数年前に脚を悪くしてしまい、杖がないと歩けない
体になってしまいました。それでも一人で大きな牛を飼い続けます。「昔から
の家業ですからね。仕事関係なく、受け継いでいくのは当たり前のことです。」
と淡々と語る姿がカッコいい。年々動かなくなっていく体ですが、牛のために
なんとか頑張るかと働いておられます。「生き物飼うのはしんどくて大変で、
責任のあることだけど、昔はこうやって一緒に生きて来たんです。それをその
ままやっているだけです。」もうすぐ肉牛として出荷されていく牛を見ながら
呟いていました。

 

しげつぐさん3
愛しそうに牛を見つめる繁嗣さん

 

「地域のために、出来ることをします。」

この日は朝から牛の放牧のお手伝いに行きました。毎年、繁嗣さんは夏前から
雪が降る前まで牛の放牧を行っておられます。牛を放すのは、大ヶ山旧スキー
場跡地。ほんの何十年か前まではここも岡山県随一の人気スキー場で、たくさ
んの人で賑わっていました。しかし、交通の便の悪さや他地域に良いスキー場
が出来てきて、少しずつ寂れ、今では人の姿もありません。そんな場所をなん
とか有効活用できないかと考え、牛の放牧をやり始めました。「牛も広いとこ
ろでのびのび暮らせるので、元気に育ってくれる。牛の喜ぶ顔を見るのが好き
なんです。」と繁嗣さん。たしかに坂も多く、草もたくさん生えて、牛にとっ
ては良い環境です。そして、牛のためではなく、地域のためという想いもあり
ます。「あの場所をほっておいたら、草もたくさんになってダメになる。牛を
飼うことで少しでも役に立つなら、地域のためと思ってやり続けます。」体が
悪くなって、自分では動けなくても、牛を通して村づくりに貢献しておられま
した。

 

しげつぐさん
今朝手伝った牛の放牧。じーっとこっちを見てくる。

 

最後に、繁嗣さんのあば村の自慢は?

「静かなところ。それが一番。」

 

あば村西谷地区の一番奥で、ひっそりと牛を飼っている繁嗣さん。家業を継ぎ
そこから牛を通して地域貢献をする。古いけど新しい村づくりへの参加を見せ
ていただけました。

 

※繁嗣さんからお願い
大ヶ山で行っている牛の放牧は、基本的に誰でも見学ができます。普段は人に
近づかない牛ですが、その日の気分によっては襲いかかってくることもあります。
見学はご自由ですが、くれぐれも気をつけてなるべく遠くの方から見るように
してください。特にお子様だけでは近づかないように注意をお願いします。

 

 

明日もお昼の12時更新。

次はどんなお話が聞けるでしょうか、お楽しみに。