2014.6.12 【あばのヒト】 投稿者:bo-kun_chan
少し前のお話、まだあば村に雪が残っていたときのことです。とある
おじいちゃんに出会って、昔の村での冬事情を教えてくれました。そ
の日は一緒に『雪輪(ゆきわ)』という雪の上を歩くための道具を手
作りしました。昨日、そのおじいちゃんに出会ったので、今日ご紹介
しようと思います。
生まれも育ちもあば村の武士さん、何度も村の冬を経験してきました。
「あば村と言えば雪、もう降らないと逆に心配になるくらいです。合併
して津山市になったけど、津山に大雪警報が出たら、間違いなくあばの
こと。よく笑い話にしています。」しかし、昔と比べたら雪の量がかな
り減って来たときたと言います。「もう昔は本当に、歩いて外に出れな
いくらいの雪が積もっていました。多い時には2階の窓に届くくらい。
あの時はまだ体力があったけど、今あの量が降ってしまうと大変なこと
になってしまうでしょうね。」高齢化の進む村にとって、除雪は大きな
問題となっています。一人暮らしの武士さん。呼吸器も弱り、常に酸素
吸引機を持って生活しておられます。「春はええな、ぽかぽかで雪もな
くて、また時期に冬が来ると思うと体が心配じゃ。」村での生活は、い
つになっても雪のことが頭から離れません。
武士さんと初めて会ったのは、まだ寒く雪がたくさん残る今年の1月で
した。この時は、雪の上を歩く専用の履物「雪輪(ゆきわ)」を作っておら
れました。(地域や世代によってはかんじきとも言うらしいです。)「私が
小学生のころは、これを履いて小学校まで言ってました。猟師もこれを
履いて山に上がったとった。」
もう使われなくなった昔の道具ですが、武士さんはまだまだ現役で雪輪
を使っておられます。手作業で、専用の道具を使いながら木を削り、綺麗
な曲線を描いていきます。「当時もこうやって、手作りしよった。木を切
ってくるとこから自分でやってな。作り方も代々伝わって来たもの。手作
りするのはええことじゃ。」こんな技術も、今は伝えていける人がいない
ことに不安がある武士さん。「君みたいに他所から来た者には本当に元気
を貰えるし嬉しいこと。けど大切なのは、地域のもんがその場所の伝統や
技術を学び、伝えていってくれること。そう考えています。」と語ります。
そうこう話している間に木を削り終えた武士さん。息を切らしながら酸素
吸引をしていました。「もう(武士さんの生きる)時間もそんなにない。」と
笑いながら言っていましたが、少し胸が苦しくなりました。
最後に、武士さんのあば村の自慢は?
静かに、しかし淡々と想いを語る武士さん。雪輪だけでなく、ミツバチ
や獣猟などいろんな知識と技を持っておられます。これを誰が受け継ぐ人
が現れてきて欲しいです。
明日もお昼の12時更新。
次はどんなお話が聞けるでしょうか、お楽しみに。