第21村人:藤本 啓子(けいこ)さん

2014.4.25 【あばのヒト】 投稿者:bo-kun_chan


 

中山間地域に住む高齢者にとっては、車で買い物に出ることも一苦労です。
あば村は、隣町の加茂にあるお店で車で30分ほど。ちょっとした日用品
の買い物をするには遠いです。そんな中、あば村の中央道路沿いに一軒の
商店があります。地域のお年寄りのため、ちょっとした息抜きの場として
商店を守ってきたお母さんを今日はご紹介。

 

藤本 啓子(けいこ)さん

 

DSC_0308

 

「私が生まれた時からある店。たくさんの人が寄ってくれます。」

あば村で生まれた啓子さんですが、藤本商店には村中から嫁いで来られました。子どものころ
からあるお店に嫁いだのは少し不思議な感覚だったそうです。「道路の拡張工事の時に、お店
を一度後ろに下げましたが、それでもずっとここにあるお店なんです。」と啓子さん。嫁いで
来た当時はまだ、店の前を通る道も整備されていませんでした。しかし、どの人もあば村へ上
がって行くときには必ず店の前を通るので「うちは関所みたいなもんですよ。」と冗談まじり
に話していました。

DSC_0045
藤本商店の外観。

 

お店の仕入れのほとんどは、啓子さんが自分で買い出しに生きます。何気なく並べられている
商品も、長年の経験とあば村のニーズを拾って来た賜物です。時にはお客さんから買って来て
欲しいものを頼まれることも。山仕事であば村にやって来たお兄さんたちは、たばことカップ
ラーメンを買っていきます。そして、あたり前のように沸き立てのお湯が店の後ろにある自宅
から出てきます。取材中に、補聴器の電池を買いにきたおじいちゃんとばったり(しかもたま
たま先日であった草苅長男さんでした)。おじいちゃんも、「物を買いにくることより、話を
することの方が楽しみで来とります。」と。村内外の人が交わる地域のちょっとしたスペース
になっていました。

 

DSC_0041
補聴器の電池を買いに来たおじいちゃん。「こんなちょっとした買い物ができることも
ありがたい」。と言います。

 

DSC_0044お店には立派なレジがあるのに、計算はそろばんで。レジは金庫代わりです。

 

「地域の人と交流して、畑をいじって。いい暮らしですよ。」

お店のお母さんでありながら、啓子さんも一村人。自信の生活では店の横にある畑で野菜を作り
加工まで行っています。「お店で人と話すのもいいし、畑で土に向かうのもいいですよ。」啓子
さんは店の暇を見つければ、畑に出て行きます。時には自分が作った野菜をお店に並べることも。
自信があるのか野菜が並ぶときはいつも、お店で一番目立つ入ってすぐの棚に並べられています。
藤本商店はあば村下沢地区にあるのですが、ここは昔から婦人の加工グループが盛んな地区です。
啓子さんももちろんその一員。先日は慣れた手つきで味噌を作っておられました。「お店やるこ
とも地域の付き合いに出ることも趣味も全部大切なこと。」だと話す啓子さん。そして、あば村
ではそれがとてもやりやすいとのこと。啓子さんが「村ではどうやって時間を使うか、自分次第
だし、流れもゆっくりだし、自分らしく生きられると思いますよ。」と言うように、あば村では
たしかに、どこか緩やかな時間が流れています。この空気は、たとえ村の人口が減っても残して
いきたいものだね、と僕と二人で村を眺めていました。

 

DSC_0814
手際よく味噌を作る啓子さん。動きがはやい。

 

最後に、啓子さんのあば村の自慢は?

「みんなが心安く寄ってくれることです。」

 

あば村を商店からずっと見守って来た啓子さん。
藤本商店という場所と、なにより啓子さん自身が、地域の交流の中心になっていました。
こんな場所があり、そこに素敵な人がいるということが、あば村にとっても宝物だと
感じました。

 

明日もお昼の12時更新
次はどんなお話が聞けるでしょうか、お楽しみに。