第18村人:草苅 長男さん

2014.4.22 【あばのヒト】 投稿者:bo-kun_chan


高齢化率が40%を超えるあば村にとって、やはり若者の流出は頭の痛い問題です。
居住はあば村でも、日中仕事に出て、一日の大半を村外で過ごすような若者も珍しく
ないです。しかし、いつの時代も田舎は資源の宝庫であり『田舎だからこそ出来ること』
がたくさんあります。そしてこの超高齢化社会だからこそ、若い人に山の中へ入り、経験
を詰んで欲しい。そう語るおじいさんに出会いました。

 

草苅 長男(たけお)さん

 

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「山にもいろんな関わり方がある。」

あば村で生まれ育った長男さん。中学校も当時あば村の下手、上加茂にあった矢筈中学校の
第2期卒業生です。当時は中学校といってもほとんど授業はなく、山を切り開いて畑を作り
自分たちでイモを育てて食料にしていたそうです。「勉強なんてする暇がなかったんじゃ。」
と話すほど当時は食べ物がなく、皆が生きるために必死でした。また、その山で植物から
繊維を取り、出荷もしていたそうです。「物心ついた時から、山に関わっていた。」と語る
長男さん。中学校卒業と同時に、山仕事に従事しました。山仕事と言っても、気を切り倒し
て間伐をするのではなく、下の雑草を刈ったり枝を拾ったりと山の掃除をすることが長男
さんの仕事でした。「開墾するのも草刈るのも木を倒すのもみんな山のため。山で、精一杯
自分が出来ることをやってきたんです。」自分は山に入ることしか出来ないけど、足が悪く
なってから何も出来なくなってしまいました。と自宅前の荒れてしまった山を寂しそうに
見つめていました。

 

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「田舎だからこその経験がたくさんある。」

あば村で80年以上も過ごして来た長男さん、今まで経験して来たことはとても貴重だった
と語ります。「山へ入ったことも、自分で米を作ったことも、とても良いことだった。今に
なって振り返ってみるとそう思います。」と。しかし、こういったことも次の世代になかなか
受け継いでいけてないことに不安があるそうです。「時代は変わったけど、大切にしていかな
ければいけないことがたくさんある。山の仕事もそう。若い人にもっと頑張って欲しい。」
特に、昔の田舎ならではの苦労を経験するのに、あば村はもってこいだと言います。「山の
草取り一つにしたって、昔は鎌でやっていました。今は刈り払い機があるけど。こうやって
自分で研いで手入れをしていました。大変だったけどなぁ。」と長男さん。少しの間だけでも
自身が山仕事で経験し、感じてきたことを若者に伝えて行きたい想いがあります。
「老い先短いけぇ」と笑いながら話をしてくれましたが、その奥ではあば村で経験したたくさん
のことを思い出していたのかもしれません。

 

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自分の使う鎌を研いでいたら、奥さんが現れて包丁を研いでくれと言われました。
どんだけ山で仕事してきても奥様にはかなわないそうです。

 

さいごに、長男さんのあば村の自慢は?

『なんにもないから、自分で考えて生きにゃいけんこと。頭を使います。』

優しい笑顔で、そう話してくれた長男さん。
山仕事のことや、歴史のこと、自身の経験したことを丁寧に語ってくれました。
私も若者の一つとして、長男さんの話を語り継ぎ、実践していかなかればならない
と肝に銘じました。長男さん、素敵なお話をありがとうございました。

 

IMG_0521お別れしてから、また黙々と鎌を研ぎ始める姿が印象的でした。

明日もお昼の12時更新。
次はどんなお話が聞けるでしょうか。お楽しみに。