2014.12.22 【あばのコト, あばのヒト】 投稿者:bo-kun_chan
『技』という漢字は、『手で支える』と書きます。ここあば村でも、ゆっくりとした時間
の中で、手間をかけ暇を惜しまずに手に技を宿してきた村人がたくさんおられます。そん
な村人の『手仕事』に注目してご紹介していくのが【特集】てまひま です。
今回のてまひまは、村の加工食品名人『ひめの会』さんを取りあえげています。手に宿した技
であば村名産の『もえぎ豆腐』を作る様子をご覧ください。
前編(https://abamura.com/tsusin/hito/1816)で作った、豆乳とにがりを混ぜた豆腐の元。
これを少し寝かせて固めます。その間に豆腐の型の準備を行います。
こちらが豆腐の型、一度に25個の豆腐が作れます。
あば村の豆腐は、しっかりと硬い食べ応えのある木綿豆腐です。いつも使っている木綿を型に
丁寧に引いていきます。
豆腐の加工場には楽しい機械がたくさん。なんと『日本トーフ機械』という豆腐を作るためだけ
の機械を作るメーカーがあるのだそうです。いたるところに『トーフ』の文字が。ひとつひとつ
どんな機械か説明してくださいました。
こちらは、大豆を煮るための大きな圧力鍋。
こちらはこれから使う、豆腐の水分を絞るための重石。こちらにもトーフの文字が。
この加工所には、まだ『阿波村(あばそん)』だった時代のものがたくさん残っています。合併
してから10年のあば村。この道具たちは少なくとも10年以上はこの加工場で活躍してきまし
た。当時は、まだまだ加工を担当する女性もたくさんおられて活気があったそうです。
阿波村加工場の文字。
こちらも現役選手。これから豆腐の表面を綺麗にするためのへらです。
加工場が賑やかだったことや、豆腐作りの失敗談などなど、思い出話をひとしきり聞いたところで
豆腐の元が固まりました。大きなプリンみたいにプルプルの元。これを掬って、型に流し込み、重
石を使って水分を抜きながら成型していきます。
まだまだプルプルの豆腐の元。
これを型に流していきます。
このまま食べてみました。水分が多く口の中で溶けていく。贅沢品です。
先ほど登場したへらで、表面を整えていきます。
ここは豆腐の顔になる部分。まるで孫を触るかのように、丁寧に愛情たっぷりに仕上げていきます。
そして、重しをかけながら豆腐の水分を抜いていきます。ここの加減によって最終的な豆腐の硬さ
が決まってきます。ここも、その日の豆の硬さやにがりの混ざり具合によって微妙に変えていきま
す。大事なのは、じわりじわりと重しをかけていくこと。一気にすると、均一に水が抜けず型崩れ
しやすいムラのある豆腐になるそうです。途中で中も覗けないので、経験と勘で作業を行っていき
ます。
じわりじわりと水分が抜かれていく。
じわりじわりと。
昔ながらの木綿作りの方法。実は、G公社以外に、あば村で個人経営で豆腐作りをしていた方が
おられます。大高下地区にお住まいの高矢さん。しっかりと硬い豆腐の元祖はここから生まれま
した。5〜6年前に辞めるまで、50年以上も豆腐を作り続けて、村内の商店や、時には津山市
まで出て豆腐を売っておられました。もえぎ豆腐もその伝統を引き継いで、しっかりと水を抜き
仕上げていきます。
約20分ほど、時間をかけて水を抜いた豆腐は最初の半分ほどの量になっていました。これで
しっかりとした木綿豆腐の完成です。
包まれている木綿を、豆腐が傷つかないように慎重にはがしていきます。
そして、崩れないように水の中へ。
綺麗で真っ白なお豆腐。
「後ろのでべそがしっかり見えているのが、水の抜けている証拠。かわいいでしょ?」
みんな仲良く綺麗に並んでいます。
そして、水の中で一つ一つ切っていきます。
こちらもずっと使われている、ひめの会さん愛用の「もういっちょう
水の中を泳ぐお豆腐たち、しっかりと固まっているので少々ぶつかっても型崩れしません。
詰め込みも手作業で。自分の手から生み出したものは最後まで面倒を見ます。
ラベルを貼って。
『もえぎ豆腐』の完成です。ひめの会さん手作りの木綿豆腐。わざわざこの豆腐を買いにあば村へ
来られる方もいるほど。その美味しさは、二人の技と知識に支えられていました。
「食べるものなんですから、最後はじぶんたちの感覚に任せて作りたい。自分たちが食べて美味い
しいものを皆さんにも食べてもらいたい。」
ただその想いだけで豆腐を作り続けておられます。おすすめはやはり、そのまま食べること。この
寒い時期は湯豆腐で、夏の時期はしっかり冷やして冷奴で。
加工屋のひめの会さん。お豆腐だけでなく、甘酒やお餅、漬物、笹餅などたくさんの加工品を作
って販売しておられます。季節のものを、その季節に合わせて美味しく作るのが楽しみだと言い
ます。しかしながら。お二人とももうご高齢でそろそろ引退も考えておられるのだとか。この伝
統技術をあば村から消してしまわないように、村としても担い手の発掘を進めているところです。
それでもまだまだ元気な二人。
村へお越しの際はぜひ二人の作るお豆腐を買って帰ってくださいね。
【特集】てまひま ひめの会さん 終