【特集】加工屋:ひめの会 前編

2014.12.16 【あばのコト, あばのヒト】 投稿者:bo-kun_chan


 

【特集】てまひま

『技』という漢字は、『手で支える』と書きます。ここあば村でも、ゆっくりとした時間
の中で、手間をかけ暇を惜しまずに手に技を宿してきた村人がたくさんおられます。そん
な村人の『手仕事』に注目してご紹介していくのが【特集】てまひま です。

 


 

 

加工屋:ひめの会 《 豆腐をつくる技 前編》

 

 

典型的な中山間地域、中国山地沿いに位置するあば村には昔から農業を営んできた方がた
くさんおられます。今も、自分で食べる分の野菜やお米は、自分のとこで全部作るという
家庭も少なくありません。そんな環境もあってか、お米や野菜など材料に『ひと手間加え
て加工する。』という技術を持った方もたくさんおられます。特に村の台所を支えて来ら
れたお母さんたちは、当たり前のように生活の中で食品を加工してこられました。そんな
中でも特に有名なのが、今回の主役『ひめの会』さんです。

 

 

 

ひめの会さんは、どちらもあば村に住んでおられる田中栄子さんと寺坂悦子さんの二人組。
村にある、財団法人グリーン公社さん内にある食品加工場で毎日毎日美味しいものを自分
たちの手で生み出しておられます。
『漬物やお餅なんかは作れて当たり前でした。そんなこともできんとどうやって田舎で生
きていく
のかってぐらいですよ。』

 

 

てまひまーひめの会8

 

てまひまーひめの会7

 

 

 

 

 

写真上が悦子さん  右が栄子さん

 


『食べ物なので、大切なのは頭で作るんじゃなくて、感覚で作ること。』

 

 

加工屋のひめの会さんは、あば村特産品『もえぎ豆腐』の生産者でもあります。グリーン公社
が販売しており、この豆腐を購入するためだけにあば村へ来られる方もいるほど人気です。
今回は、そんな豆腐作りの様子に立ち会わせていただきました。

 

 

昔から豆腐作りの朝は早いと聞いていましたが、この日の集合時間は朝の6時。真冬でまだ
お日様も登っていない時間帯から作業が始まります。一つ一つの豆腐を、豆をしぼるところ
から始めるので、出来立てのお豆腐を提供するためにはこの時間から作らないといけないと
のこと。白い息を吐きながら手早く準備を進めていきます。

 

 

てまひまーひめの会1

冬季、早朝のあば村はとにかく寒いです。この日も気温はマイナスでした。

 

 

 

大豆は全て岡山県産のものを使用します。ふっかふかに炊かれた大豆の匂いが加工場内に立

ち込めます。
『豆を炊くところから豆腐作りは始まります。この豆の硬さを見て、豆腐の硬さや水の量も
調整していくんです。それぞれ豆も個性があって面白いですよ。』

豆の炊き加減も時間や温度だけでなく、その場で豆を触ったり食べたりして確認していきます。
食べるものなので、頭ではなくて自分が培ってきた感覚で作っていくのが大切なのだとか。

 

てまひまーひめの会2

ふっかふかの大豆。このままでも美味しそうですが、ひめの会さんの手でもっと美味しく変身します。

 

 

この大豆を機械ですり潰していきます。蒸気で視界の悪い中ですが、すり潰しの荒さはその時
に応じて変えていきます。
『昔は、これを石臼でやりよったんよ。今はそんなことようせんけど、やることは一緒。濃す
ぎず薄すぎずにすり潰していく。上手に説明はできないです。』

ここでも長年の経験が生きてきます。

 

 

てまひまーひめの会3

機械化されましたが、同じ石臼が中にあるのだそうです。

 

 

つまひまーひめの会11

絞られた大豆、まだドロドロしていて繊維が多く残っています。

 

 

すり潰した大豆の液からは、先ほどの蒸した大豆とは別の良い香りが。一度熱を加えて沸騰させ
ると大豆の青臭さが消え、泡立ち始めるそうです。
『この香りが豆腐の香りになるんです。何回豆腐作ってもこの香りは好きですよ。』

 

 

てまひまーひめの会13

泡立った絞り液からは豆腐の香りが。この泡が出ることもポイントだそうです。

 

 

 

すり潰した液を木綿の布で濾して、大豆の余分な繊維や粕を取り除いていきます。ここで残った
粕が『おから』、濾し出てきた液が『豆乳』となるのです。

 

 

てまひまーひめの会12

 

 

 

てまひまーひめの会14

濾し出された豆乳。搾りたてを一口いただきましたが、市販のものとは比べられない香りでした。
舌触りも濃く、いつまでも口の中が大豆の味がひろがります。ここでしか味わえない贅沢品です。

 

 

この『豆乳』を暖かいままにがりと混ぜ合わせます。にがりもその時の大豆やすり潰した後の液
を見て濃度を調整していきます。
『最初は固いもんができたり、全く固まらんかったり、上手くいきませんでしたよ。けど、何度
かやったらコツが分かってきました。いまでもたまーに失敗するけどね。』

 

 

てまひまーひめの会6

にがりもその日に合わせて微妙に濃度を変えます。ちょっとの差でも仕上がりが全然変わってくる
のだとか。まさに神業でした。

 

 

てまひまー姫の会1

暖かいままにがりと混ぜていきます。

 

 

これで豆腐の元となる液は完成です。少し固まるまで休憩タイム。やっと一息つけます。

 

 


 

 

ひめの会さんが大切にしている【自分たちの感覚で加工する。】ということ。豆腐の元作りにお
いても常に五感を使っての作業でした。
『時間とか温度とかもきっちり見ますけど、やっぱり最終的には自分の目と鼻で決めます。だっ
て食べるのは人間さんなんですから。』

と話す二人。自分たちがやってきたという自身も持ちながらの言葉でした。

 

 

てまひまーひめの会4

 

 

 

 

 

次回はいよいよ固めて、私たちの目にする【豆腐】へと加工していきます。さらに豆腐だけでなく
様々な加工品を作っておられるひめの会さんの様子も少しお届け。

 

 

 

次回は12月22日(月)の更新予定です。お楽しみに。