【特集】山師:佐々木操 Vol.1木を切る

2015.2.24 【あばのヒト, あば通信】 投稿者:bo-kun_chan


 

【特集】てまひま

『技』という漢字は、『手で支える』と書きます。ここあば村でも、ゆっくりとした時間
の中で、手間をかけ暇を惜しまずに手に技を宿してきた村人がたくさんおられます。そん
な村人の『手仕事』に注目してご紹介していくのが【特集】てまひま です。

 


 

 

山師:佐々木 操(みさお) 《木を切る技》

 

 

 

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岡山県津山市あば村。典型的な中山間地域に位置するこの場所は、なんと土地の90%
近くが森林地帯になっています。初めて来た人も、『森の中に村がある。』と感じるほ
ど、見渡す限りの木々。この冬の時期は、雪がつもり真っ白に、春になると桜と梅が色
付き、夏には新緑、秋には紅葉。春夏秋冬様々な景色を見せてくれます。

 

 

あば村も、かつては大林業地帯でした。何百年も前に、『木地師』という職人たちがこ
の土地へ移り住んだことから阿波が始まったと言われています。木地師は、山の木を使
い、お盆や食器などの木工品を作る職業でした。そのため、自ずと木を育て、山を管理
する技術や人も集まってきました。管理された山は、光が差し込み木々が堂々と立ち並
んでまっすぐ育ちます。立派で上質な木が阿波地区でたくさん生産されていました。

 

 

今では、木材価格の低下と過疎高齢化により林業をする人たちは激減してしまいました。
けれども、山は残っています。昔の人たちが大切に管理し、残してくれた阿波の山をなん
とか次世代に残していきたい。阿波で生まれた山仕事の技術をなんとかこの土地に残して
いきたい。そんな想いを持ちながら、今もなお山に入り続ける一人の男性を追いかけまし
た。

 

 

 

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佐々木 操さん 73歳(恥ずかしいらしいので、横顔です。)
相性は『みーさん』もともとは鳥取の因幡地方生まれ。結婚を気にこのあば村へやってき
ました。ひたすらに山へ入り続けて、50年以上。今もなお、現役で林業をしている数少
ない村人の一人です。いつも、「山はええぞ、山はええぞ。」と言っておられ、70代と
は思えない足つきで山を駆け上がります。趣味はそば打ち。自分で育てた蕎麦の実を打つ
のが楽しみだそうです。この様子は後日。今日は、山師である操さんの様子に密着しました。

 

 


 

 

2014年 6月22日(日)
からっと夏晴れの下、あば村に人が集まってきました。今日は、『100年の木を切り倒
す会。』その公開作業を見学しに来られた方々です。歴史ある木を倒す作業はなかなか見
ることができません。何より、そんな木を倒せる人も今は少なくなってきているとのこと。

 

 

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操さんは、今日の主役。樹齢100年の木を切り倒す役です。
「こんな大役を受けて光栄です。木を切り続けてきてよかった。(木を)倒すことに絶対
安全なんて無い。最新の注意を払って、いつも緊張感を持って作業しています。」
特に今日は、周りに観客を置いての作業。木を倒し続けてきた自身と同時に、少し不安な
気持ちも出てきています。

 

 

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まず、手始めに少し細い木を切ります。どんな木でも気持ちを込めて切るという操さん。
チェーンソーの歯を入れる前に、必ず『ポンポン』と二回木を叩きます。木を管理して
きてくれた方への経緯を込めてとのこと。
「今、私が切っている木も隣に生えている木も、昔の人達が植えて、草刈りをし、枝を打
ちをして大切に育ててきてくれたもの。その人達のためにも、安全に倒さなければいけま
せん。」
倒す方向と安全確認は、必ず自身の目で行います。何度も何度も方向を確かめ、確実にそ
の方向へ。

 

 

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チェーンソーを入れる向きや角度、早さによっても微妙に倒れ方が変わってきます。常に
歯を入れる感覚を確かめながら、長年の感覚を元に切り進めていきます。
「簡単に見えるようですけど、思った方向に木を倒すのが一番難しい。先端にある枝の方
向まで見て、木がどんな動きをするか予想するしかない。こればっかりは、経験です。」

 

 

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生まれた木のクズからする香りに、参加者も大興奮。袋に詰めるだけで商品になりそう。

 

 

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いよいよ、樹齢120年の大木を倒します。この木は、あば村に住む小椋英介さんの4代
前の方が植え、代々守ってきた木です。もちろん、英介さんが若いころも草を刈り、余分
な枝を落として管理してこられました。たくさんの想いのこもった木、操さんも少し緊張
気味です。

 

 

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慎重に、木を切る角度を決めていきます。この作業で木が倒れる方向と早さが決まります。
倒れた木が跳ねすぎないように、折れないように、なんども確認して計算をしながらの作
業。見守る観衆も静かに、息を飲みます。

 

 

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『バキバキバキバキッ』とけたたましい音を鳴らしながら、木が倒れました。倒れた瞬間
には、山全体が揺れているような大きな振動が。と同時に周りから大きな拍手が。迫力満
点な光景に皆さん思わず感動してしまった様子。

 

 

 

僕も感動して、急いで操さんに駆け寄りました。緊張から説かれて安心した様子。しかし
ちょっとさびしい一言をつぶやきました。

 

 

「いや、最後にいい経験をさせてもらいました。これで私も引退です。」

 

 

 

 

こんなに元気で、確かな技も持っている人が引退するなんて…
目の前で繰り広げられた、感動の光景も、もうあば村で見ることができないのだろうか。
操さんもご高齢、林業界も厳しい状況、しかたないことかも知れませんが、なんともで
きない自分が少しさびしくなりました…

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

1か月後、突然電話が入りました。操さんからです。

 

 

「木を切りに行くから手伝えーや!!」

 

 

わずか一ヶ月の電撃復帰。いや、もはや引退なんてしていませんでした。

 

 

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この日は、あば村が進めている「木の駅プロジェクト」に出す木を切り出しに行く
とのこと。木の駅プロジェクトとは、地域内で出された木を、地域内で消費する仕
組み作りを行うプロジェクト。あば村では、木質チップに加工し、あば温泉を沸か
す燃料にしています。
(木の駅プロジェクトについて詳しくはこちら→http://abamura.com/kinoeki

 

 

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既に切り倒しておいた木の枝を落としていきます。枝が出ていると加工がしにくい
そうなので、なるべくギリギリのところで落としていく。

 

 

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枝を落とし、まっすぐになった木を同じ長さに揃えていきます。等間隔に印の付け
られた杓子を使って長さを図る。メジャーなんてなかった時代の知恵。
「新しいものもどんどん出てくるけど、私は私がしてきたことしか出来ない。だか
ら作業は古臭いと言われるかもしれませんけど、一緒に作業をする仲間と自分のこ
とを信じる、それが私にできる最高の仕事なんです。」テキパキと作業を進めてい
く姿がかっこいい。

 

 

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操さんと作業をする仲間のご紹介。
まずはやっちゃん。操さんとも大の仲良し。いつも一緒にいます。そば打ちの趣味も
一緒でイベントでは一緒に出店しています。やっちゃんは大工さん、いろんな家を作
ってきて、木のこともよく知っています。

 

 

 

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こちらけんじさん。森林組合にも努めておられた山のプロ。操さんややっちゃんにも
できない大きな機械を乗りこなし、作業を助けてくれます。けんじさんも阿波の山を
守る、大切な山師の一人です。

 

 

 

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操さん、阿波へ嫁いで来られたからも長いですが、実は3年ほど岐阜県へ修行をしに
出ておられたそうです。
「主に、ワイヤーを張って木を運び出す仕事を学びに行っていました。山が大好きだ
ったので、とにかくいろんな仕事を見たかった気持ちもあります。とても良い思い出
になって、ビデオにも残してます。また今度見に来なさい。」

 

 

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綺麗に長さの揃えられた木は、運搬車で運びます。

 

 

 

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軽トラいっぱいになりました。この日は一日中作業をして軽トラ5杯分の木を出すこ
とができました。

 

 

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お昼休憩の際にも、木を切るためのチェーンソーの手入れをしていました。専用の道
具で歯を一本一本研いでいきます。もはや、相棒。女房のことより、チェーンソーの
気持ちがよく分かるそうです。

 

 

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木を土場に降ろして一日の作業は終了。

 

 

 

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日もだいぶ落ちて、汗まみれになっていました。

 

 

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終わった後は、もちろん温泉へ。
「自分が出した木で湧いている温泉だから、なおさら気持ちが良いですよ。」と。
操さんしか味わえない温泉の気持ちよさです。

 

 

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山仕事が大好きだという操さん。死ぬまで山に入り続けると断言していました。途中
で引退宣言を出した時は驚きましたが、大切なあばの山を守る、貴重な山師さんです。

 

木を切るということは、時代と人を超えて与えられたものをいただく作業。
このことを常に感謝して操さんは作業をしておられるそうです。そのスケールの大きさ
と、山師の誇りにただただ感動するばかりでした。

 

 

【特集】山師:佐々木操 Vol.1木を切る ー終ー

 

 

 


 

 

次回、てまひまは

 

【特集】山師:佐々木操 Vol.1 蕎麦を打つ

2月26日(水) 13:00時に公開予定です。

 

かっこいい、誇り高い操さんを今回はご紹介しましたが。
次回は、少しおちゃめな、けどこだわり持って続けているそば作りの様子を
ご紹介いたします。お楽しみあれ。